小説を書きたい人のためのサイト

小説の書き方(素人)

技術編

説明と描写

更新日:

 登場人物の容姿や情景を伝える手段に説明と描写があります。
 説明は”美人な女性”というような一方向的な情報です。
 描写は”つやのある長い髪をした、物静かな女性”というような、客観的なイメージです。これだとその女性が美人かどうかは読者側にゆだねられまます。そこに想像するスペースが生まれて作品に奥行きが生まれるのです。

例)
・昨日食べた麻婆豆腐はすごく辛かった
・昨日食べた麻婆豆腐はマグマのように真っ赤だった

 どちらのほうがより辛そうに感じるでしょうか?
 辛いと伝えるのではなく、読者に辛そうだと考えさせるのが腕の見せ所です。

 描写はキャラクターに個性を与える効果もあります。
 例えば3人の女性のキャラクターが登場するとしましょう。
 A子は美人だ、B子も美人だ、C子も美人だ、となったらどうでしょうか。作品が単調になるだけでなく登場人物が薄っぺらになって、読者に効果的なイメージを植え付けることができません。

例)
・A子は髪が長くておとなしそうな顔をしている
・B子はショートヘアで目つきがするどい
・C子はふわふわとしたセミロングで丸顔をしている

 このようにかき分けることによって、A子・B子・C子がべつべつの女性としてイメージできたと思います。
 1人も美人だとは説明していないのがミソです。読者によってはA子よりC子がタイプだと思う人もいるでしょう。

 描写する対象は人物だけではありません。場所や物に対しても使うことができます。

例)
・連れてこられた部屋は狭い部屋だ
・連れてこられた部屋は、黄ばんだ畳が敷かれた六畳ほどの部屋だ

 すこし描写をしただけで、古いアパートの一室のような臨場感が増したと思います。

例)
・彼の車は、速いスポーツカーだ。
・彼の車は、弾丸のような流線型をしたシルバーメタリックのスポーツカーだ。

 すこしだけ迫力がデマした。
 効果的な描写のテクニックをみがけば臨場感が増すとともに作品に独自性を与えることができます。

例)
 二人の女は三四郎の前を通り過ぎる。若い方が今まで嗅いでいた白い花を三四郎の前へ落として行った。三四郎は二人の後ろ姿を凝と見詰めていた。看護婦は先へ行く。若い方が後ろから行く。華やかな色の中に、白い薄を染抜いた帯が見える。頭にも真白な薔薇を一つ挿している。その薔薇が椎の木陰の下の、黒い髪の中で際立っていた。
『三四郎 作:夏目漱石より』

 三四郎がはじめて美禰子を見かけた場面です。
 直接的に美しいと書くのではなく、帯と黒い髪に挿した白い薔薇の対比による描写が美禰子の古風で知的な感じをよくあらわしていると思います。

 他にも一見すると関係ない情景を描写することで主人公の心理を遠回しに表現するテクニックもあります。

「見えるか、フェリックス、あの星々が……」
 あれらの星々は、いずれも数億年、数十億年の生命を閲している。人類が誕生するはるか昔から輝きつづけ、人類が死滅しきった後も輝きつづけるだろう。人の生命は、星の一瞬のきらめきにもおよばない。そんなことは古来からわかりきったことである。だが、星の永遠と、人の世の一瞬とを認識するのは、人であって星ではない。
『銀河英雄伝説 作:田中芳樹より』

 作品のラストで主人公であるラインハルトが死んで、戦友だったミッターマイヤーが息子を抱えて夜空の星を見上げるシーンです。息子と星を見上げることで、ミッターマイヤーの性格とさみしさを効果的に描写していると思います。これがただ単に、ミッターマイヤーは泣いたとか、悲しんだという説明だと読者はがっかりとはしないまでも、薄っぺらいなーと思ってしまうかもしれません。夜の星を見上げるのが、いかにも銀河英雄伝説だなという独自性があるのです。

 注意点としては、一人称と三人称で効果が微妙に違うので注意してください。
 一人称で、主人公がA子を美人だと言った場合には、説明ではなくて評価や主観になります。そういった説明を積み重ねることで、逆に主人公がどういった人間なのかを描写する効果があります。

-技術編

Copyright© 小説の書き方(素人) , 2019 All Rights Reserved Powered by STINGER.