実践編で書きましたが、1話目から書くというのはあまりないです。
あと、時間・場所・登場人物を書くと説明しましたが、冒頭としてはかなり悪い例です。
1話目は物語の顔とも言うべき重要な導入部です。仮にラストに盛り上がる展開を用意していたとしても、最初がつまらないと多くの読者がそこまで読み進むことはありません。
ましてや無名の素人の作品であれば……。
つまり1話目でいかにして読者の興味をひきつけるかがとても重要なのです。
そのため1話目を最後に書くというプロの作家も多いです。
では、どうすれば良いかと言うと、ズバリ『事件』を起こすです。
例えば、田中芳樹の銀河英雄伝説は、2人の主人公であるラインハルトとヤン・ウェンリーがいきなり激突するアスターテ会戦で物語がはじまります。
山田風太郎の柳生忍法帳では、会津七本槍によって捕らえられた堀一族の男たちが縄で縛られて東海道をくだる様子が描かれ、東慶寺の門前で妻や娘たちを惨殺するというかなりショッキングな事件で物語がスタートします。
読者がこの先はどうなるんだ、と興味をひかれることは確実です。
以下に簡単な例を示します
1)
金曜日の放課後の事だ。
A子に呼ばれた俺は化学室のドアをノックした。
2)
朝、俺が教室に入るとA子の死体があった。
制服の胸にはナイフが刺さり、血が床を真っ赤に染めていた。
まったく違う話ですが、冒頭から状況説明の1よりもいきなり死体が出てくる2のほうが読者の興味をひくはずです。
ミステリーや推理小説では、早い段階で死体が出てくるのはもはや鉄則です。ハリウッド映画だと戦闘シーン。名探偵コナンくんが毎回死体と遭遇するのもこの大前提に従っています。
理想は『新世紀エヴァンゲリオン』の第1話です。いきなり正体不明の敵が攻めてきて、見たこともない巨大ロボットに乗せられる――。説明はまったくなしです。あれほど見事な導入部は小説でも映画でも見たことがありません。
間違っても説明ばかりのたいくつな導入部にならないようこころがけましょう。